「自分の店」しか見えていなかったあの頃の私へ。アパレル店長が数字を「共通言語」にするべき本当の理由

雑談

「数字は苦手。それよりも目の前のお客様や、スタッフとのコミュニケーションが大事。」

店長時代の私は、本気でそう思っていました。毎日送られてくるPOSデータも、チェックするのは予算比と前年比くらい。隣の店が売れていれば「あそこは立地がいいから」「客層が違うから」と自分に言い訳をして、自分の城を守ることに必死でした。

しかし、店長からエリアマネージャー、そして本部の企画・分析へと立場が変わるにつれ、私はある「衝撃的な事実」に気づかされました。

それは、立場が変わると、同じ数字を見ていても「見えている景色」が180度違うということです。

【視界のギャップ:自分の店 vs ブランド全体】

店長やマネージャーだった頃、私の視界は「自分の担当範囲」に限定されていました。

  • 店長時代: 自店と、せいぜい近隣のライバル店。
  • マネージャー時代: 担当エリアの数店舗。

当時はそれが全てだと思っていました。でも、本部でブランド全体のデータ(NBDモデルやABC分析など)を俯瞰するようになった今、当時の自分がいかに「点」でしか物事を見ていなかったかを痛感しています。

例えば、自店の売上が落ちた時。 店長時代の私は「天気が悪かった」「スタッフの活気がなかった」と、現場の空気に原因を求めていました。しかし今、全体の数字を見れば「実はブランド全体でこのカテゴリーの需要がシフトしていた」という構造的な理由が瞬時にわかります。

この「景色の違い」を知っているかいないか。 これが、単なる「作業としての店長」で終わるか、「ブランドを動かすプロデューサー」になれるかの境界線だったのです。

【なぜスプレッドシートが「共通言語」になるのか】

本部は、常に「構造」で話をします。一方で現場は「感情」と「体感」で話をします。 この二つがぶつかり合うと、「本部は現場を分かっていない」「現場は数字を見ていない」という、この業界によくある悲しいすれ違いが起きてしまいます。

この深い溝を埋めてくれる唯一のツールが、数字(Excel・スプレッドシート)です。

難しい関数を覚えることが目的ではありません。 「自分の店の今の数字」を、ブランド全体や他エリアの数字という「モノサシ」で測ってみる。すると、今まで見えなかった「自分の店の本当の強み」や「改善すべき急所」が、本部の人間と同じ解像度で見えてくるようになります。

【ネクストアクションが180度変わる瞬間】

店長時代の私にとって、数字は「終わったことの確認」でした。 「昨日はこれだけ売れた(良かった)」「今日は客数が少なかった(悪かった)」。 そこからのネクストアクションは、どうしても「明日はもっと声出しを頑張ろう」「VMDの棚を少し入れ替えよう」といった、現場の熱量に頼ったものになりがちでした。

しかし、本部の視点でスプレッドシートを叩くようになった今、私の「数字を見た後の感想」と「次の一手」は劇的に変わりました。

  • 店長時代: 「このシャツ、売れてるな。もっと目立つ所に置こう」
  • 本部・分析の視点: 「このシャツはAランク店では動いているが、Bランク店では滞留している。客層のミスマッチか? Aランク店へ在庫を移送して完売速度を上げよう」

店長一人の「勘」では見えなかった「在庫の最適化」や「機会損失の防止」という、経営レベルのアクションが数字から導き出されるようになったのです。

この「景色の違い」を理解したとき、私は初めて「本部は現場をいじめているのではなく、ブランドという大きな船を沈ませないための舵取りをしているんだ」と腹落ちしました。

【スプレッドシートは、現場の「熱い想い」を届ける武器】

誤解してほしくないのは、「数字が全て」と言いたいわけではないということです。 アパレルの現場にある「お客様を笑顔にしたい」「この服の良さを伝えたい」という熱意。これこそがブランドの命です。

でも、その熱意を本部に届け、会社を動かそうと思ったとき、感情論だけでは壁にぶつかります。 「この商品は絶対に売れるから、もっと発注してほしい!」と叫ぶよりも、 「過去3週間の販売推移とセット率を分析した結果、在庫を20%増やせば売上は15%上振れする予測です」 とExcelやスプレッドシートで語る店長の方が、圧倒的に信頼され、自分の理想とする店作りを実現できるのです。

Excelやスプレッドシートは、単なる計算ソフトではありません。 あなたの「現場の勘」を「誰もが納得するロジック」へと変換する、最強の「翻訳機」なのです。

【まとめ:まずは1枚のシートから「景色の向こう側」を覗こう】

「数字が苦手」という理由で、この強力な武器を捨ててしまうのは、あまりにももったいない。 最初から難しいマクロや複雑なNBDモデルを使いこなす必要はありません。

まずは、自分の店のPOSデータをExcelかスプレッドシートに貼り付け、隣の店や先月の自分と比較してみることから始めてみてください。 その時、あなたの視界は「自分の店」という囲いを超え、ブランド全体の「流れ」という新しい景色に繋がります。

「数字が読める店長」の先には、「ブランドを動かすプロデューサー」としての未来が待っています。

さあ、今日からMacBookを開いて、あなただけの「共通言語」を磨き始めてみませんか?

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